Column
放課後等デイサービスQ&A
2024.03.17

2024年(令和6年)放課後等デイサービス報酬改定の変更点や加算・減算要件を解説

2024年(令和6年)放課後等デイサービス報酬改定の変更点や加算・減算要件を解説

2024年(令和6年)度に、放課後等デイサービスなどの障がい福祉サービスの報酬改定が行われます。今回の改正では、サービスの質の向上やさまざまなニーズに合わせた支援の実施などが評価の対象となりました。

今回新たに創設された加算も多く、今後どのようなサービスを提供すべきか悩んでいる事業所もあるでしょう。

この記事では、2024年(令和6年)の報酬改定における変更点や、新設された加算・減算について解説します。

この記事を読むことで、最新の改定事項を把握でき、適切なサービス提供と事業所運営ができるでしょう。

2024年(令和6年)報酬改定の施行時期と今後の方向性

令和6年2月に詳しい改定内容が発表されましたが、施行時期はいつになるのでしょうか?

ここでは、報酬改定の施行時期と、今後変更が予定されている児童発達支援事業の今後の方向性ついて解説します。

障がい福祉サービス報酬改定の施行日はいつ?

放課後等デイサービスなどの障がい福祉サービスの報酬改定は、2024年(令和6年)4月1日に施行されます。

ただし、新たに追加措置を行う福祉・介護職員の処遇改善分および処遇改善加算の一本化は、令和6年6月1日に施行される予定です。

参考:厚生労働省『令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要

放課後等デイサービスの2類型はいつから?

放課後等デイサービスは、2024年の法改正で「総合支援型」と「特定プログラム特化型」の2つに分類される予定です。

本来1人ひとりの特性に合わせた支援を実施する施設ですが、見守りや習い事のような障がい児通所支援の内容にふさわしくないサービスを提供している施設もあります。

今後は、この2つの分類に当てはまらない施設は、公費の対象外となる可能性があるでしょう。

参考:厚生労働省『児童発達支援・放課後等デイサービスの主な検討事項(案)

【改定事項①】質の高い発達支援の提供の推進

障がい児支援では、子どもや保護者に適切なアセスメントを行い、1人ひとりの特性に合わせた支援の実施が重要です。

ここでは、質の高い発達支援の提供に関する改定事項を解説します。

参考:厚生労働省『令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容

支援プログラムの作成と公表

今回の報酬改定で、5領域を全て含めた総合的な支援と、5領域とのつながりを明確にした個別支援計画などを作成し、公表することが新たな運営基準として定められました。5領域とは、以下の内容が含まれます。

  • 健康・生活
  • 運動・感覚
  • 認知・行動
  • 言語・コミュニケーション
  • 人間関係・社会性

なお、これらの作成と公表を怠った場合は、支援プログラム未公表減算の対象となり、所定単位数の85%のみの算定となります。

専門的な支援体制の評価

専門的な支援を提供できる体制の構築や、専門的な支援の実施などの評価方法が改定されました。

児童指導員等加配加算

児童指導員等加配加算では、経験のある人材の活用を進めていくという観点が評価の対象となり、保有している資格や経験年数に応じて単位数が異なります。

1.児童指導員などを配置した場合

  • 常勤専従・経験5年以上:75~187単位/日
  • 常勤専従・経験5年未満:59~152単位/日
  • 常勤換算・経験5年以上:49~123単位/日
  • 常勤換算・経験5年未満:43~107単位/日

2.その他の従業員を配置した場合

  • 36~90単位/日

関連記事:放課後等デイサービス経営の重要ポイント!児童指導員等加配加算・専門的支援加算について

専門的支援加算・特別支援加算

今回の報酬改定で、専門職の配置や支援体制が評価の対象となりました。そのため、専門的支援加算と特別支援加算は「専門的支援体制加算」と「専門的支援実施加算」に変更されています。

  • 専門的支援体制加算:49~123単位/日
  • 専門的支援実施加算:150単位/回

専門的支援体制加算は、理学療法士などの専門職の配置が算定要件です。

専門支援実施加算は、専門職による計画的な支援の実施が評価の対象となり、利用日数に伴って月に2〜6回算定可能です。

関連記事:放課後等デイサービス経営の重要ポイント!児童指導員等加配加算・専門的支援加算について

【要チェック】放課後等デイサービスの特別支援加算と福祉専門職員配置等加算の算定要件

基本報酬の下限の設定・時間区分の創設

30分未満の極めて短時間の施設利用だった場合は、算定の対象にはなりません。また、利用者それぞれの支援時間に応じて区分が設けられました。

支援時間による3区分は、以下のとおりです。

  • 30分以上1時間30分以下(区分1)
  • 1時間30分超3時間以下(区分2)
  • 3時間超5時間以下(区分3)

放課後等デイサービスで「3時間超5時間以下」を算定する場合は、学校休業日のみ対象となります。

自己評価・保護者評価の実施方法の明確化

放課後等デイサービスでは、自己評価と保護者による評価の内容と改善した点を保護者に開示し、インターネットなどで公表しなければなりません。

事業所は、これらの実施方法を明確にし、運用の適正化に努めることとされています。

関係機関との連携の強化

個別支援計画作成時以外に医療機関や児童相談所などと情報連携を行った場合、関係機関連携加算の算定ができます。

  • 関係機関連携加算(Ⅰ):250単位/回(月1回まで)※保育所や学校などと連携し個別支援計画を作成
  • 関係機関連携加算(Ⅱ):200単位/回(月1回まで)※保育所や学校などとⅠ以外での情報連携
  • 関係機関連携加算(Ⅲ):150単位/回(月1回まで)※児童相談所・医療機関などと情報連携
  • 関係機関連携加算(Ⅳ):200単位/回(1回まで)※就学先・就職先と連絡調整

セルフプランで施設を利用する児への支援

セルフプランにより複数の事業所を利用している子どもに対し、事業所間で子どもの状態や支援状況の共有など情報連携を行った場合、事業所間連携加算の対象となります。

  • 事業所間連携加算(Ⅰ):(中核となる事業所)500単位/回(月1回まで)
  • 事業所間連携加算(Ⅱ):(連携する事業所)150単位/回(月1回まで)

連携の中核となる事業所として、会議開催などによる事業所間情報連携、家族への相談援助や自治体との情報連携を行った場合、事業所間連携加算Ⅰが算定できます。

また、情報連携に参画し、事業所内で情報を共有・支援に反映した場合は、事業所間連携加算Ⅱの算定が可能です。

関連記事:【令和6年報酬改定対応】家族支援加算・子育てサポート加算・関係機関連携加算・事業所間連携加算

将来の自立に向けた支援

子どもの将来的な自立への支援は、新たに創設された通所自立支援加算と自立サポート加算の対象となります。

  • 通所自立支援加算:60単位/回(算定開始から3月まで)
  • 自立サポート加算:​​100単位/回(月2回まで)

通所自立支援加算は、学校や自宅から事業所までの移動を職員が援助した場合に算定が可能です。

自立サポート加算は、高校生(2年・3年)に対し、学校や地域の企業と連携しながら相談援助や体験などの支援を行った場合に算定できます。

【改定事項②】支援ニーズの高い障がい児への支援

より専門的な支援を必要とする子どもへの支援の充実を図り、地域で安心して生活ができる環境整備の実施が、今回の改定事項で示されました。

ここでは、支援ニーズの高い障がい児への支援に関する改定事項を解説します。

医療的ケア児・重症心身障がい児に対する支援の実施

喀痰吸引などが必要な障がい児に対し、認定特定行為業務従事者による支援を行った場合、医療連携体制加算(Ⅶ)を算定できます。

この加算は1日につき250単位で、重症心身障がい児に対して支援を行う事業所も含まれます。

医療的ケア児などに対する入浴支援

医療的ケア児や重症心身障がい児に対し、発達支援と入浴支援の実施で、入浴支援加算の対象となります。

放課後等デイサービスでは、1回につき70単位とされています。

医療的ケア児などに対する送迎援助

医療的ケア児や重症心身障がい児に対する送迎は、子どもの医療濃度などを加味して評価するよう、送迎加算が見直されました。

1.児童発達支援センター・重症児を主に支援する事業所以外の場合

  • 障がい児:54単位/回
  • 重症心身障がい児 :+40単位/回
  • 医療的ケア児 :+40単位
  • 医療的ケア児 (医療的ケアスコアが16点以上):+80単位/回

※医療的ケア区分に非該当の事業所でも算定可

2.児童発達支援センター・重症児を主に支援する事業所の場合

  • 重症心身障がい児:40単位/回
  • 医療的ケア児 :+40単位
  • 医療的ケア児 (医療的ケアスコアが16点以上):+80単位/回

※​​医療的ケア児は、医療的ケアができる職員の付き添いが必須

※重症心身障がい児は、職員の付き添いが必要

関連記事:【令和6年報酬改定対応】送迎加算・延長支援加算・欠席時対応加算

共生型サービスにおける医療的ケア児への支援

共生型サービスでは、医療的ケア児への支援を行った場合に算定できる、共生型サービス医療的ケア児支援加算が新たに創設されました。

単位数は1日につき400単位で、看護職員など1名以上の配置が算定要件です。

強度行動障がいを有する児への支援

専門職を配置し、強度行動障がいを有する児へ支援を実施すると、強度行動障害児支援加算を算定できます。

  • 強度行動障害児支援加算(Ⅰ):(児基準20点以上)200単位/日
  • 強度行動障害児支援加算(Ⅱ):(児基準30点以上)250単位/日(放課後等デイサービスのみ)

※ⅠとⅡの共通事項:加算開始から90日間は+500単位/日

実践研修修了者(Ⅱは中核的人材)を配置した上で、支援計画の作成・支援の実施が算定要件です。

関連記事:【放課後等デイサービスの加算】個別サポート加算・強度障がい児支援加算

ケアニーズの高い児への支援

さまざまな障がいを持つケアニーズの高い子どもに対する評価が見直され、新たな加算も創設されました。

放課後等デイサービスの個別サポート加算(Ⅰ)

強度行動障がいの知識を有する職員による支援の実施や、著しく重度の障がい児が施設を利用した際に算定できる個別サポート加算(Ⅰ)の内容が改定されました。

重症心身障がい児や、著しく重度の障がい児(主として重症児を除く)に対しての支援の実施で、1日につき120単位算定できます。

個別サポート加算(Ⅱ)

子ども家庭センターやサポートプランに基づく支援との連携を促進する目的で、個別サポート加算(Ⅱ)の内容が変更されました。

要保護・要支援児童に対し、児童相談所や子ども家庭センターなどと連携して支援を行った場合、1日につき150単位を算定できます。

人工内耳装用児支援加算

人工内耳装用児支援加算は、人工内耳を装用している子どもに対し専門的な支援を行うために設けられた制度です。今回の改定により、算定要件に応じてⅠとⅡに分けられました。

  • 人工内耳装用児支援加算(Ⅰ):445~603単位/日
  • 人工内耳装用児支援加算(Ⅱ):150単位/日

人工内耳装用児支援加算(Ⅰ)は、聴力検査室を設置した児童発達支援センターにおいて支援を実施した場合に算定できます。人工内耳装用児支援加算(Ⅱ)は、その他のセンターや事業所での支援の実施が対象です。

どちらも医療機関との連携の下、言語聴覚士を配置し計画的な支援の実施が算定要件となります。

関連記事:【放課後等デイサービスの加算】個別サポート加算・強度障がい児支援加算

視覚・聴覚・言語機能障害児支援加算

視覚・聴覚・言語機能障害児支援加算は、視覚・聴覚・言語機能に重度の障がいのある子どもへの支援の強化を目的に新設された制度です。

意思疎通に関する専門的な知識を有する職員を配置し支援を実施した場合、1日につき100単位を算定できます。

不登校児への支援

通常の発達支援に加え、学校と連携を取りながら不登校児への支援を実施した場合、新設された個別サポート加算(Ⅲ)の算定が可能です。

この加算は、放課後等デイサービスのみ算定でき、1日につき70単位とされています。

【改定事項③】家族に対する支援の充実

障がい児の支援だけでなく、保護者や兄弟などの支援を推進していくことが、今回の報酬改定で示されました。

ここでは、家族に対する支援の充実に関する改定事項について解説します。

家族への相談援助などの充実

事業所が保護者の相談に応じた援助の実施で、算定できる加算があります。

家族支援加算

改定前は、事業所内相談支援加算と家庭連携加算を別々に算定していましたが、今回の報酬改定で2つの加算が統合され、家族支援加算となりました。

家族支援加算は、個別とグループでの支援に加え、兄弟などの相談援助も対象であることを明確化する必要があります。

1.家族支援加算(Ⅰ)

  • 個別での相談援助:居宅訪問 300単位(1時間未満200単位)/回
  • 施設などで対面での相談援助:100単位/回
  • オンライン:80単位/回

2.家族支援加算(Ⅱ)

  • 施設などで対面での相談援助 80単位/回
  • オンライン:60単位/回

家族支援加算(Ⅰ)と(Ⅱ)どちらも月に4回まで算定できます。

関連記事:【令和6年報酬改定対応】家族支援加算・子育てサポート加算・関係機関連携加算・事業所間連携加算

子育てサポート加算

保護者に対して手厚い相談援助を行うことを目的に新たに創設された制度です。

保護者に支援を行っている様子を見学してもらう機会を設け、子どもの特性や特性を踏まえた子どもへの関わり方について相談援助を行った場合、加算の算定ができます。

単位数は1回につき80単位、月に4回まで算定可能です。

関連記事:【令和6年報酬改定対応】家族支援加算・子育てサポート加算・関係機関連携加算・事業所間連携加算

規定時間以外の延長支援

仕事や諸事情により、規定の時間以外でサービスの利用を検討している場合もあるでしょう。そんなニーズに応え、一定の時間を超えた支援は延長支援加算として評価されることとなりました。

1.延長1時間以上2時間未満

  • 障がい児:​​92単位/日
  • 重症心身障がい児・医療的ケア児:192単位/日

2.延長2時間以上

  • 障がい児:123単位/日
  • 重症心身障がい児・医療的ケア児:256単位/日
  • 延長30分以上1時間未満
  • 障がい児:61単位/日
  • 重症心身障がい児・医療的ケア児:128単位/日

基本報酬での最長の支援時間(放課後等デイサービスは平日3時間・学校休業日5時間)に加え、通常の支援時間の前後の延長支援で算定できます。

職員は2名以上の配置が必要で、そのうち1名は人員基準により配置すべき職員の配置(児童発達支援管理責任者含む)が条件です。

また、延長30分以上1時間未満の単位は、利用者の都合により延長時間が短くなった場合のみ算定できます。

関連記事:【令和6年報酬改定対応】送迎加算・延長支援加算・欠席時対応加算

【改定事項④】インクルージョンの促進

障害の有無に関わらず、全ての子どもが共に生活していけるような環境整備も、今後必要な取り組みとなります。

ここでは、インクルージョンの取り組みに関する改定事項を解説します。

保育所などへの移行支援

保育所と放課後等デイサービスの併行通園や、保育所への移行などに向けた具体的な取り組みを個別支援計画に記載・実施することが運営基準として示されました。

また、今までは保育所に移行後、保育・教育等移行支援加算の算定ができましたが、今後は移行前の支援についても評価の対象です。

  • 退所前に移行に向けた支援を実施した場合:500単位/回(2回まで)
  • 退所後に居宅訪問による相談援助を実施した場合:500単位/回(1回まで)
  • 退所後に保育所訪問による助言・援助を実施した場合:500単位/回(1回まで)

保育所等訪問支援の確保・促進

訪問支援時間の下限を30分以上とし、保育所や学校と連携して個別支援計画を作成することが運営基準として示されました。

また、関係機関との連携に関する加算や訪問支援員に対する加算なども変更点があるため確認していきましょう。

関係機関連携加算

関係機関連携加算は、訪問先の施設や利用児童の支援に関わる医療機関、児童相談所などの関係機関と連携して個別支援計画の作成・ケース会議の実施を促進する目的で新たに創設された制度です。

単位数は1回につき150単位で、月に1回までとされています。

関連記事:【令和6年報酬改定対応】家族支援加算・子育てサポート加算・関係機関連携加算・事業所間連携加算

自己評価結果等未公開減算

保育所等訪問支援事業所は、運営基準により自己評価や保護者評価、訪問先での評価を実施し公表することと定められています。

これらを怠った場合、新設された自己評価結果等未公表減算の対象となり、所定単位数の85%のみの算定となります。

訪問支援員特別加算

今までは、障がい児支援の経験が5年以上ある保育士や作業療法士などの配置が要件でした。しかし、今回の改定で、職員の配置だけでなく当該職員による支援の実施と経験のある訪問支援員に対しての評価が見直されました。

  • 訪問支援員特別加算(Ⅰ):業務従事10年以上(または保育所等訪問など5年以上):850単位/日
  • 訪問支援員特別加算(Ⅱ):業務従事5年以上(または保育所等訪問など3年以上):700単位/日

多職種連携支援加算

訪問支援員特別加算の対象となる訪問支援員を含む、職種の異なる複数人のチームで支援を実施した場合、多職種連携支援加算の算定ができます。この加算は、今回の報酬改定で新設されました。

単位数は1回につき200単位で、月に1回までとされています。

ケアニーズ対応加算

ケアニーズ対応加算は、重症心身障害児や医療的ケア児などケアニーズの高い障がい児への支援強化を目的に、新たに創設された制度です。

訪問支援員特別加算の対象となる訪問支援員を配置し支援することが算定の要件となり、単位数は1日につき120単位算定できます。

2024年(令和6年)放課後等デイサービス報酬改定内容【まとめ】

2024年(令和6年)に実施される障がい福祉サービス報酬改定では、多くの加算の内容が変更されました。放課後等デイサービスでも、質の高いサービス提供や障がい児の家族を含めた対応が求められます。

利用者1人ひとりの状態を把握し、さまざまなニーズに対応したより良い支援を行うことが、今後の事業所運営において必要となるでしょう。

お問い合わせ