児童発達支援と令和9年度報酬改定|988/1000・中核機能・インクルージョンの論点と今できる備え
この記事は2026年9月21日時点の公開資料に基づくものです。令和9年度改定の内容は決まっていません。
この記事でわかること
- 令和9年度改定の議論のうち、児童発達支援だけに関わる論点は何か
- 2026年6月から始まっている「988/1000」は誰が対象で、今後どうなるのか
- 改定の中身が決まらなくても、今から進められる備え
令和9年度(2027年度)の障害福祉報酬改定に向けた議論が始まりました。2026年8月27日に「主な論点(案)」が示され、9月24日からサービスごとの検討に入ります。今わかっているのは「何を議論するか」までで、単価も加算の中身も改定率も決まっていません。
どの会議で決まるのか、論点全体はどうなっているのか、改定までのスケジュールはどうかは、令和9年度報酬改定はどこまで決まったか(全体まとめ)にまとめています。この記事では、児童発達支援に固有の話だけを扱います。
節目だけ押さえておきましょう。2026年11月に経営実態調査などの結果が公表され、12月の政府予算編成で改定率が決まります。そのあと2027年2月に改定案、2〜3月に告示改正、4月から適用という順番です。児童発達支援が検討チームの何回目の会議で議題になるかは、まだ公表されていません。
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児童発達支援に関わる論点は、大きく4つ
1. 新規指定の基本報酬は988/1000(放デイとは率が違う)
これは議論中の話ではなく、すでに施行されている話です。令和8年度の臨時改定で「応急的な報酬単価の特例」が導入されました。対象は2026年6月1日以降に新規指定を受けた事業所だけで、既存の事業所の単価は変わりません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 児童発達支援の単価 | 所定単位数の1000分の988 |
| 放課後等デイサービスの単価 | 所定単位数の1000分の982 |
| 対象 | 2026年6月1日以降に新規指定を受けた事業所 |
| 適用期間 | 令和9年度報酬改定までの間 |
| 配慮措置(従前の単価) | 主として重症心身障害児を通わせる事業所/医療的ケア区分・強度行動障害児支援加算・人工内耳装用児支援加算・視覚聴覚言語機能障害児支援加算を算定する利用者に係る基本報酬/離島・中山間地域の事業所 など |
児発と放デイで率が違う点に注意してください。1000分の988と1000分の982です。対象サービスの選び方も公表されています。費用額の規模が大きく、令和6年度の収支差率が5%以上で、事業所数が3年続けて伸びているサービスが選ばれました。
気になるのは改定後の扱いですが、公開資料には「令和9年度報酬改定までの間」と書かれているだけで、その先のことは示されていません。新規開設や事業譲渡を検討している場合は、988/1000を前提にした収支計画にしておくのが安全です。
2. 児童発達支援センターの中核機能を、さらに強化する
障害児支援の検討事項には「児童発達支援センターの中核機能の更なる強化に向けた方策」が明記されました(2026年8月27日の検討チーム資料)。
これは新しく出てきた話ではありません。令和6年度改定で、児発センター向けの中核機能強化加算と、センター以外の児発・放デイ向けの中核機能強化事業所加算が新設されています。その延長線上の議論です。加算を広げるのか、要件を見直すのか、事業として整理し直すのかは、まだ何も示されていません。
関係団体からは「要件が厳しいので見直してほしい」「加算ではなく公的な事業として安定して実施すべきだ」という意見が出ています。ただしこれは団体の意見であって、国の方針ではありません。見込みとして読むことはできません。
3. インクルージョンと地域連携
検討事項の3番目が「インクルージョン及び地域支援・地域連携の推進に向けた方策」です。こちらも令和6年度改定の続きにあたります。令和6年度には、インクルージョンに向けた取組が運営基準に位置づけられ、保育・教育等移行支援加算が見直されました。
関連する動きとして、こども家庭庁に「インクルージョン推進に向けた関係者懇談会」が新設され、2026年7月24日に第1回が開かれています。幼児教育・保育、障害児支援、特別支援教育、放課後児童対策を横断して話し合う場です。第2回以降の予定は公表されていません。
児童発達支援にとっては、地域の保育所・幼稚園・認定こども園とどうつながるかという話です。改定の中身を待たなくても、連携先と内容を記録に残していく作業は今から積み上げられます。
4. 5領域と支援プログラムの公表は「質の評価」の土台
令和6年度改定で、児童発達支援には5領域すべてを含めた総合的な支援が運営基準で求められるようになりました。個別支援計画でも5領域とのつながりを明確にします。支援プログラムの作成・公表も基準で、公表していない場合は所定単位数の85%に下がります(支援プログラム未公表減算)。
令和9年度改定の論点には「サービスの質を確保するための運営基準、報酬の算定要件等のあり方」が挙がっています。質をどう評価するかという議論の出発点が、この5領域と支援プログラムです。支援プログラムを公表し、個別支援計画と実際の支援がそこにつながっている状態は、今の基準でも次の改定でも土台になります。
背景にある数字:収支差率7.8%
令和7年の経営概況調査によると、令和6年度決算の収支差率(補助金を含まない)は次のとおりです。
| サービス | 令和5年度 | 令和6年度 |
|---|---|---|
| 児童発達支援 | 8.1% | 7.8% |
| 放課後等デイサービス | 7.9% | 9.1% |
| 全サービス単純平均 | 5.0% | 4.6% |
児童発達支援の事業所数は15,181か所(2026年1〜3月平均)まで増えています。この数字は、応急的な報酬単価の特例で児発が対象に選ばれた理由と直接つながっています。次のデータは2026年11月に公表される予定です。自分の事業所の収支差率と人件費率を先に出しておくと、そのとき位置関係がすぐわかります。
児童発達支援が今からできる備え
改定の中身が決まっていない以上、「改定を見越した対策」はできません。ここに挙げるのは、改定がどうなっても役に立つことだけです。
1. 支援プログラムと個別支援計画のずれを直す
支援プログラムを公表しているだけでは足りません。そこに書いた5領域の内容と、個別支援計画、日々の支援記録が同じ方向を向いているかを見てください。作った当時のままで、今の利用児の状態像と合っていない事業所は少なくありません。年1回、見直す時期を決めておきましょう。
2. 連携と家族支援を「記録」として積み上げる
インクルージョンと地域連携、家族支援は、どちらも検討事項に入っています。今の制度でも、保育・教育等移行支援加算、関係機関連携加算、家族支援加算という形で評価があります。どの園と、いつ、どんな内容でやりとりしたか。保護者面談やグループプログラムをいつ実施したか。連携も家族支援も、「やっていること」より「記録が残っていること」が評価の前提になります。
3. 重度のこどもを受け入れる体制を一歩進める
医療的ケア児・重症心身障害児等への支援の充実は、障害児支援の検討事項にも、その前の論点にも重ねて出てきます。988/1000の配慮措置でも重度児対応は従前単価のままでした。看護職員の配置、強度行動障害支援者養成研修(実践研修)修了者の確保、主治医や相談支援専門員との連携づくりは、今の報酬でも意味があります。新規開設で総量規制がかかる地域でも、これらのこどもを対象とする場合は例外的な取扱いの例に挙げられています。
4. 全サービス共通の宿題は、ナビで一気に片づける
虐待防止・身体拘束・BCP・情報公表といった減算につながる必須対応と、加算の要件・記録の確認は、児発に限らずすべての事業所に共通する話です。項目は無料の必須対応・減算ナビと加算ナビで確認できます。年度初めに年間スケジュールへ落としてしまうのが確実です。
まとめ
- 令和9年度改定は論点が示された段階です。報酬の中身も改定率も決まっていません。
- 児童発達支援に固有の論点は、中核機能の強化、インクルージョンと地域連携、質の評価(5領域・支援プログラム)、そして新規指定の988/1000の扱いです。
- 収支差率7.8%という数字が、報酬を見直す議論の背景にあります。
- 今できるのは、支援プログラムと計画のずれを直すこと、連携と家族支援を記録に残すこと、重度児の受入れ体制を進めること。どれも改定の結果に左右されません。
「何から手をつければいいか分からない」という場合は、障害福祉専門のTS assistにご相談ください。今の運営で優先すべきことを一緒に整理します。
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あわせて読みたい
根拠資料
- 障害福祉報酬改定検討チーム 第62回 資料2「令和9年度障害福祉報酬改定に向けた主な論点(案)」(2026年8月27日):障害児支援の検討事項7項目、質の確保、適正な評価
- 社会保障審議会障害者部会 第159回 資料1「令和9年度障害福祉報酬改定の議論の状況について」(2026年9月17日):スケジュール、主な論点と「今後変更することがあり得る」旨
- 同 第62回 資料3「令和9年度障害福祉報酬改定に関する主な意見」(2026年8月27日):中核機能に関する団体意見(国の方針ではありません)
- こども家庭審議会障害児支援部会 第19回 資料1「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(報告)」(2026年4月27日):応急的な報酬単価の特例(988/1000・982/1000、対象、配慮措置)
- 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定(障害児支援関係)改定事項の概要:中核機能強化加算・中核機能強化事業所加算、5領域と支援プログラム未公表減算、インクルージョン
- 障害福祉報酬改定検討チーム 第48回 資料4「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果の概要」(2025年11月25日):令和5・6年度決算の収支差率
- 同 第62回 参考資料「障害福祉サービス等の最近の動向」(2026年8月27日):事業所数・費用額
- 障害福祉サービス事業者等の指定のガイドライン(2026年6月、厚生労働省・こども家庭庁):総量規制の例外的な取扱い
- こども家庭庁「インクルージョン推進に向けた関係者懇談会」:第1回=2026年7月24日
- 障害福祉報酬改定検討チーム(会議一覧):今後の資料はこのページに掲載されます
この記事は2026年9月21日時点の公開資料に基づいています。令和9年度改定の内容は決まっておらず、論点自体も「今後議論を進めていく中で変更することがあり得る」とされています。最新の状況は上記の会議一覧ページでご確認ください。
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