保育所等訪問支援と令和9年度報酬改定|4年で2.3倍、いま押さえる5つのこと
この記事は2026年9月21日時点の公開資料に基づくものです。令和9年度改定の内容は決まっていません。以下は、国の検討チームと審議会の公開資料に書かれていることだけを扱います。
この記事でわかること
- 保育所等訪問支援は4年で事業所数2.3倍・利用人数2.8倍。インクルージョンの推進が議論の中心にあること
- 令和8年度に入った新規指定事業所の基本報酬引下げの特例に、保育所等訪問支援は入っていないこと
- 「支援時間30分以上」の数え方に団体から意見が出ていること(国の方針ではありません)
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議論はいまどの段階か
令和9年度の報酬改定は、国の障害福祉報酬改定検討チームで議論されています。令和8年8月27日に「主な論点(案)」が示され、9月17日に社会保障審議会障害者部会へ報告されました。論点が並んだ段階で、改定率も、保育所等訪問支援の具体的な見直し案も、まだ公表されていません。
この先の節目は3つです。令和8年12月に報酬・基準の基本的な考え方の取りまとめ(改定率もこの時期に決まります)。令和9年2月に改定案のとりまとめ。2〜3月に告示の改正と通知の発出です。
論点の全体像と日程の詳細は、令和9年度報酬改定はどこまで決まったか(全体まとめ)にまとめています。この記事では、保育所等訪問支援の話だけを扱います。
4年で2.3倍。伸びているサービスとして見られている
| 項目 | 令和4年4〜6月平均 | 令和8年1〜3月平均 |
|---|---|---|
| 事業所数 | 1,274か所 | 2,867か所 |
| 利用人数 | 12,654人 | 35,209人 |
約4年で事業所数は約2.3倍、利用人数は約2.8倍になりました。総費用額は月平均で約10億5千万円です(2026年8月27日の検討チーム資料)。
今回の論点では、障害児支援が独立した柱になりました。その検討事項のひとつが「インクルージョン及び地域支援・地域連携の推進に向けた方策」です。保育所等訪問支援は、保育所や幼稚園、学校といった地域の場に出ていく仕組みそのものです。数字が大きく伸びていることと、インクルージョン推進が論点の中心にあること。保育所等訪問支援は、この2つが重なる位置にいます。
こども家庭庁でも、令和8年7月24日に「インクルージョン推進に向けた関係者懇談会」の第1回が開かれました。第2回以降の開催は、まだ公表されていません。
新規指定の報酬引下げ、保育所等訪問支援は対象外
令和8年度の臨時改定で、新しく指定を受けた事業所の基本報酬を下げる特例が入りました。児童発達支援は1000分の988、放課後等デイサービスは1000分の982です。この特例の対象サービスに、保育所等訪問支援は入っていません。
ただし、この特例が令和9年度以降どうなるかは資料に書かれていません。「令和9年度報酬改定までの間」の措置とだけ記載されています。いまは対象外である、という事実だけを押さえておけば十分です。
「30分以上」に何を含めるか
令和6年度改定で、訪問支援時間の下限が30分以上になりました。この数え方について、団体から意見が出ています。
全国児童発達支援協議会の意見はこうです。「30分以上の基準に、関係機関との情報共有や保護者との連携の時間を含めている事業所がある。こどもを直接観察もしくは支援する時間であることを基準上明確に示してほしい」(2026年8月27日の検討チーム資料)。
これは団体の意見であって、国の方針ではありません。基準を変えると決まったわけでもありません。ただ、訪問記録を「子どもを直接支援・観察した時間」と「訪問先職員との打合せや保護者への報告の時間」に分けて書いておくことは、いまの基準のままでも損になりません。運営指導でも中身が伝わります。
もう1件、社会的養育地域支援ネットワークから「支援先をこども食堂・居場所事業・習い事等にも拡充し、報酬を充実すべき」という意見も出ています。これも団体の要望です。資料の中で保育所等訪問支援に直接触れた意見は、この2件だけでした。
3つの評価と、関係機関連携加算
保育所等訪問支援には、令和6年度改定で入ったこのサービス固有のルールがあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 3つの評価 | 自己評価・保護者評価に加えて訪問先施設の評価。実施・公表をしないと減算 |
| 支援時間 | 訪問支援時間の下限は30分以上 |
| 個別支援計画 | 訪問先と連携して作成・見直し(運営基準) |
| 関係機関連携加算 | 150単位/回、月1回が限度 |
今回の論点には「支援体制の評価の在り方」が検討事項として挙がっています。評価の仕組みが議論されるとき、その土台になるのはいまの3つの評価です。訪問先評価は他のサービスにはない仕組みなので、実施と公表を毎年きちんと回しているかどうかがそのまま差になります。
関係機関連携加算は、訪問先のほか、児童相談所やこども家庭センター、医療機関などと会議で情報連携した場合に算定できます。地域連携の推進が論点に挙がっている以上、実際に会議を開いて記録を残している事業所は、説明の材料を持っていることになります。要件の詳細は保育所等訪問支援の加算・減算一覧で確認できます。
収支差率6.3%という数字
令和7年の経営概況調査によると、保育所等訪問支援の令和6年度決算の収支差率(補助金を含まない)は6.3%でした。全サービスの単純平均は4.6%です。前年度の6.5%からは0.2ポイント下がっています。
論点には「経営状況等を踏まえた報酬の設定」が挙がっています。平均より高い数字が出ていることは事実ですが、これが議論でどう扱われるかは、資料には書かれていません。なお、令和9年度改定の直接の材料になるのは、令和8年11月に概況が公表される経営実態調査(令和7年度決算)のほうです。
訪問支援が今からできる備え
改定の中身が決まっていない以上、改定を見込んだ準備はできません。ここでは、保育所等訪問支援だからこそ意味があり、いまの制度のままでも役に立つことだけを挙げます。
1. 訪問記録で「直接支援の時間」を分けて書く
直接支援・観察の時間と、打合せや報告の時間を分けて記録します。30分以上の下限は現行のルールです。団体から数え方を明確にしてほしいという意見が出ている以上、分けておけば、基準がどう整理されても慌てずに済みます。
2. 訪問先との連携を、計画とモニタリングに残す
訪問先の担当者名、共有した内容、訪問先の職員に対して行った支援の内容を書き残します。インクルージョンや地域連携が具体化したとき、そのまま実績として説明できる材料になります。
3. 3つの評価と関係機関連携加算を、実際に回す
訪問先評価を含む3つの評価は、実施と公表までがセットです。関係機関連携加算も、算定できる会議を実際に開いて記録に残しているかどうかがすべてです。どちらも、いまの収入と減算に直結する話です。
4. 経営実態調査に出した数字の控えを残す
令和8年6月に実施された経営実態調査(令和7年度決算)は、令和9年度改定の基礎資料になります。回答した事業所は提出した数字の控えを残しておくと、11月の概況公表後に、自分の事業所の位置を読み取れます。
このほか、虐待防止・身体拘束・BCP・情報公表の棚卸しや、処遇改善加算の区分の見直しも大事ですが、これは全サービス共通の話です。要件や減算の中身は加算ナビと必須対応・減算ナビで確認してください。
まとめ
- 令和9年度改定は論点が示された段階です。改定率も、保育所等訪問支援の見直し案も公表されていません。
- 4年で事業所数2.3倍・利用人数2.8倍。インクルージョンの推進が論点の中心にあります。
- 新規指定の基本報酬引下げの特例に、保育所等訪問支援は含まれていません。
- 30分以上の数え方には団体の意見が出ています(国の方針ではありません)。記録の書き分けが備えになります。
- 3つの評価と関係機関連携加算、収支差率6.3%。いずれも、いまの運営の中で手を打てる話です。
「訪問先との連携の残し方が自己流になっている」「算定できるはずの加算を取りこぼしている気がする」という場合は、障害福祉専門のTS assistにご相談ください。改定の動きは、公開資料が出たタイミングで随時お伝えしています。
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あわせて読みたい
根拠資料(一次資料)
- 社会保障審議会障害者部会 第159回(令和8年9月17日)資料1 令和9年度障害福祉報酬改定の議論の状況について:論点の全体像、今後のスケジュール
- 障害福祉報酬改定検討チーム 第62回(令和8年8月27日)資料2 令和9年度障害福祉報酬改定に向けた主な論点(案):インクルージョン及び地域支援・地域連携の推進、支援体制の評価の在り方、経営状況等を踏まえた報酬の設定
- 同 第62回 資料3 令和9年度障害福祉報酬改定に関する主な意見:保育所等訪問支援に関する団体意見(国の方針ではありません)
- 同 第62回 参考資料 障害福祉サービス等の最近の動向(令和8年3月まで):事業所数・利用人数・総費用額
- 令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果の概要(第48回 資料4):収支差率6.3%、全サービス単純平均4.6%
- 令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(報告):応急的な報酬単価の特例の対象サービス、処遇改善加算の加算率
- 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定(障害児支援関係)改定事項の概要:訪問支援時間30分以上、訪問先と連携した個別支援計画、3つの評価、関係機関連携加算
- こども家庭庁 インクルージョン推進に向けた関係者懇談会:第1回(令和8年7月24日)
- 厚生労働省 障害福祉報酬改定検討チーム(資料一覧)
本記事は2026年9月21日時点の公開資料に基づいています。議論は今後も進みますので、最新の状況は上記の資料一覧でご確認ください。
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