放課後等デイサービスと令和9年度報酬改定|982/1000・収支差率9.1%・送迎・18歳移行
この記事は2026年9月21日時点の公開資料に基づくものです。令和9年度改定の内容は決まっていません。
この記事でわかること
- 2026年6月以降に新規指定を受けた放デイの基本報酬が982/1000になっている理由と、その期限
- 放デイの収支差率9.1%が、「メリハリのきいた報酬体系」という論点にどうつながっているか
- 送迎・定員区分・18歳到達後の接続という、放デイに固有の3つの論点と、今できる備え
令和9年度(2027年度)の報酬改定に向けた議論が始まっています。ただし2026年9月21日時点で出ているのは、検討のスケジュールと「主な論点(案)」、関係団体の意見までです。改定率も、単価も、基準の見直し案も公表されていません。放デイが検討チームの議題に載る回も、まだ公表されていません。
会議体の説明や論点4本柱の全体像は、令和9年度報酬改定はどこまで決まったか(全体まとめ)で解説しています。この記事では、放課後等デイサービスに直接関わる話だけを扱います。
1.新規指定の982/1000は、いつまで続くのか
令和8年度の臨時的な改定で、2026年6月1日以降に新規指定を受けた放課後等デイサービスは、基本報酬が所定単位数の982/1000になりました。すでに指定を受けている事業所は対象外で、従前どおりです。
対象サービスの選び方も公表されています。年間総費用に占める割合が1%以上で、令和6年度の収支差率が5%以上、かつ事業所数が過去3年間5%以上伸び続けているサービス。放デイはこの3つに当てはまりました。
ただし、すべての報酬が一律に下がるわけではありません。次のケースは従前の単価が維持されます。
| 区分 | 従前単価が維持されるもの |
|---|---|
| 重度障害児等 | 主として重症心身障害児を通わせる事業所の基本報酬/医療的ケア区分(1〜3)、強度行動障害児支援加算(Ⅰ)(Ⅱ)、人工内耳装用児支援加算、視覚・聴覚・言語機能障害児支援加算を算定する利用者に係る基本報酬 |
| 地域 | 離島・中山間地域(特別地域加算の対象地域)にある事業所/自治体が客観的に必要として設置する事業所 |
重い障害のある子どもを受け入れている場合は、引下げの外に置かれているということです。「一律に下げるのではなく、支援の中身で差をつける」という考え方が、すでに令和8年度の時点で形になっています。
この特例は、資料では「令和9年度報酬改定までの間」と書かれています。それだけです。改定後に元に戻るのか、続くのか、形を変えるのかは、公開資料からは確認できません。新規開設や事業譲渡を検討しているなら、982/1000が続く前提で収支を見ておくほうが安全です。
2.収支差率9.1%と「メリハリのきいた報酬体系」
放課後等デイサービスの令和6年度決算の収支差率は9.1%でした。全サービスの単純平均は4.6%です(2025年11月25日の検討チーム資料、令和7年経営概況調査)。事業所数も24,525か所まで増えています。
この数字が、令和9年度の論点にそのままつながっています。2026年8月27日の検討チーム資料には、「長期化した経過措置への対応の検討なども含め、メリハリのきいた報酬体系とする必要があるのではないか」という一文が置かれています。同じ資料には「必要な支援を行っていない事業者ではなく、質の高い支援の提供にしっかりと資源が用いられるようにする見直し」も明記されています。
放デイは「収支に余裕があるサービス」として数字で名指しされている側にいます。ここを動かせるのは、支援の中身を示せるかどうかだけです。
なお、11月に令和8年経営実態調査(令和7年度決算)の概況が公表される予定です。ここで放デイの新しい収支差率が出ます。この数字が、12月の取りまとめと改定率の議論の土台になります。
あわせて「長期化した経過措置への対応」が資料に2か所書かれています。人員配置や設備で経過措置を使って運営している項目があれば、今のうちに一覧にしておくと、12月に方向性が出たときすぐ影響を判定できます。
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3.送迎と定員区分:「移動時間や定員規模」という記述
同じ資料に、こう書かれています。「サービス提供にかかる移動時間や定員規模など、サービス提供の実態に応じた報酬のあり方」を検討する必要があるのではないか、と。
これは全サービス向けの論点ですが、送迎を毎日行い、定員による逓減がある放デイには直接効いてきます。また、令和8年の経営実態調査には追加項目として送迎時間が入りました。送迎にどれだけ時間とコストがかかっているかを、国が数字で把握しにいっているということです。
関係団体からは、送迎中の支援の実態をサービス提供時間として評価してほしい、燃料費や車両費の高騰に対応してほしい、定員区分を細分化し利用定員に応じた加配を評価してほしい、といった意見が出ています。ただしこれらは団体の意見であって、国の方針ではありません。検討事項に挙がっているのは「実態に応じた報酬のあり方」という書き方までです。
4.18歳到達後の接続
論点2(2)に、「障害児支援施策から障害者支援施策への円滑な接続・移行等の促進」が明記されました。放デイにとっては、高校3年生の卒業後の行き先の話です。
関係団体からは、放デイと生活介護の報酬の差を埋めてほしいという意見も出ていますが、これも国の方針ではありません。公開資料で確定しているのは、「円滑な接続・移行」が検討事項に入ったという事実だけです。
それでも、今できることははっきりしています。高校2〜3年生を抱えているなら、地域の生活介護・就労継続支援・相談支援専門員との顔つなぎを早めに始めることです。制度がどう変わっても、卒業後の行き先がないという事態は本人と家族にとって最も重いので、ここは改定を待つ必要がありません。
5.不登校児の受入れ
放デイには、令和6年度改定で新設された個別サポート加算(Ⅲ)70単位/日があります。不登校の状態にある障害児に対し、学校と連携して支援した場合に算定できる加算です。
令和9年度に向けては、不登校児の支援に特化した新たな加算の創設を求める団体意見が出ています(国の方針ではありません)。現時点で確実なのは、学校との連携の記録を残しておけば、今の制度のままで加算の根拠になるということです。
放課後等デイサービスが今できる備え
改定の中身が出ていない以上、先回りはできません。放デイに固有で、今やっても損にならないことに絞ります。
(1)982/1000を前提に、新規開設と事業承継の数字を作り直す
新しく指定を受ける事業所の基本報酬は982/1000です。既存の事業所の数字で収支計画を立てていると、初年度からずれます。重症心身障害児を主とする事業所や、離島・中山間地域の事業所は対象外になる点も、あわせて確認してください。
(2)送迎と定員の「実態」を数字で持つ
1日あたりの送迎の所要時間、1台あたりの乗車人数、定員に対する実利用数。移動時間と定員規模が検討事項に挙がっている以上、自分の事業所の実態を数字で説明できる状態にしておくことが、いちばん堅い備えになります。経営実態調査の対象になった事業所は、送迎時間の欄を実態どおりに記入することが、そのまま業界全体の備えになります。
(3)重度児・不登校児の受入れを記録に残す
強度行動障害児支援加算、医療的ケア、個別サポート加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)。これらはすべて現行の加算で、今の収支にそのまま効きます。同時に、令和8年度の引下げ特例でも従前単価が維持された領域であり、検討事項でも「支援ニーズの高い児への支援の充実」として扱われています。強度行動障害支援者養成研修の受講計画と、算定根拠となる調査票・学校との情報共有記録を整えておくことです。
(4)18歳到達組の出口を、今年度中に動かす
高校3年生の一覧を作り、相談支援専門員と卒業後の行き先を共有する。生活介護や就労継続支援の見学を年度内に入れる。これだけで、改定の内容にかかわらず価値があります。
共通の備えは、制度ナビで
減算になる状態の点検(個別支援計画未作成、児発管欠如、自己評価結果等未公表、支援プログラム未公表、虐待防止措置未実施、BCP未策定、情報公表未報告)は、必須対応・減算ナビで確認できます。処遇改善加算の区分と職場環境等要件の公表、取りこぼしている加算がないかは加算ナビでご確認ください。どちらも全サービス共通の話なので、ここでは詳しく触れません。
今後の節目
2026年11月に経営実態調査と従事者処遇状況等調査の概況が公表され、12月の予算編成を経て基本的な考え方が取りまとまります。改定案のとりまとめは2027年2月、適用は2027年4月です。放デイが検討チームの議題に載る回は、2026年9月21日時点では公表されていません。
「うちの数字はどう見られるのか」「取りこぼしている加算はないか」を整理したい場合は、障害福祉専門のTS assistにご相談ください。
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あわせて読みたい
根拠資料
- 障害福祉報酬改定検討チーム 第62回 資料2「令和9年度障害福祉報酬改定に向けた主な論点(案)」(2026年8月27日):論点2(2)の18歳移行(p.5)、障害児支援の検討事項(p.6)、メリハリのきいた報酬体系・移動時間・定員規模(pp.7-8)、事業所数・総費用の推移(p.1)
- 同 第62回 資料3「令和9年度障害福祉報酬改定に関する主な意見」(2026年8月27日):送迎・定員区分・18歳移行・不登校支援に関する関係団体の意見(国の方針ではありません)
- 同 第62回 参考資料「障害福祉サービス等の最近の動向(令和8年3月まで)」:放デイの事業所数24,525か所
- 検討チーム 第48回 資料4「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果の概要」(2025年11月25日):令和6年度決算の収支差率(放デイ9.1%/全サービス単純平均4.6%)
- 「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(報告)」(こども家庭審議会障害児支援部会 第19回 資料1):応急的な報酬単価の特例(放デイ982/1000、対象サービスの選定基準、配慮措置)、処遇改善加算の拡充
- 検討チーム 第54回 資料2「令和8年障害福祉サービス等経営実態調査の実施について(案)」(2026年3月10日):調査の時期・対象、追加項目(送迎時間ほか)
- 社会保障審議会障害者部会 第159回 資料1「令和9年度障害福祉報酬改定の議論の状況について」(2026年9月17日):検討スケジュールと論点の報告
- 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定(障害児支援関係)の概要:個別サポート加算(Ⅲ)70単位/日の新設、各減算の内容
- 厚生労働省「令和8年度に実施する統計調査等」:経営実態調査・処遇状況等調査の公表予定
- 厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」:各回の資料一覧
本記事は2026年9月21日時点で公表されている国の資料のみに基づいています。令和9年度改定の内容は決まっておらず、論点も今後変更されることがあります。最新の状況は上記の各ページでご確認ください。
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