ADHDの子どもが母親の言うことを聞かないのはなぜ？反抗挑戦性障がいの症状と対処法を解説

ADHDのお子さんは、母親の言うことを聞かなかったり反抗的な態度を示したりと、関わりが難しい場合があります。

手をつけられないほどの反抗的な行動に、どう対処したら良いか悩みを抱えている母親も多いのではないでしょうか？

このような行動の背景には、ADHDに加えて反抗挑戦性障がいが関係している可能性があります。

この記事では、反抗挑戦性障がいの特徴や症状、ADHDとの関連性について解説します。

この記事を読むことで、反抗挑戦性障がいのお子さんとの適切な関わり方がわかり、親子関係も良好になるでしょう。

反抗挑戦性障がいとは

反抗挑戦性障がいは、幼児期から学童期の子どもにみられることが多い行動障がいです。

一般的な反抗期とは異なり、症状が持続的で日常生活や学校生活に大きな支障をきたすことがあります。

ここでは、ADHDとの関連性や主な症状をみていきましょう。

反抗挑戦性障がいとADHDの関連性

反抗挑戦性障がいは、ADHDと診断された子どもの20〜56％に併発する可能性があります。

特に、ADHDの主症状である衝動性の強さは反抗的な行動との関連が深く、行動に対して注意や抑制を受けると、その反動で反抗的な態度が強まっていく悪循環が生じてしまいます。

ADHDの特性に対する適切な支援と理解があれば、反抗的な行動の予防や軽減にもつながる可能性があるため、一貫した支援体制の構築が重要でしょう。

参考：独立行政法人国立特別支援教育総合研究所『第3章発達障害に関連のある行動障害について』

反抗挑戦性障がいの症状

反抗挑戦性障がいの主な症状には、以下のような特徴があります。

• 頻繁なかんしゃくや感情の爆発
• 大人の要求や規則への意図的な反抗
• 挑戦的な行動

他者を故意に苛立たせる行動や自分の過ちを他人のせいにする傾向もみられ、時には意地悪な言動や行動を示すこともあります。

これらの症状は、家庭だけでなく学校などの社会的な場面でも現れることもあり、週に1回以上、少なくとも半年間続く場合は診断の目安となるでしょう。

母親の言うことを聞かないのはなぜ？母親が直面する課題

反抗挑戦性障がいを持つ子どもの多くが、母親に対して強く反抗的な態度を示す場合があります。

これは、母親が最も安全で安心できる関係であるため、強い感情を表出できるという心理が働いているからです。

しかし、一貫した対応の難しさや日々の反抗的な態度による精神的な疲労など、母親が直面する課題は多いでしょう。

子ども本人の支援ももちろん必要ですが、家族全員で特性について理解を深めたり専門家に相談したりと、母親の負担を軽減する方法を考えることも重要です。

反抗挑戦性障がいの原因

反抗挑戦性障がいは、複数の要因が複雑に絡み合って発症します。

ここでは、反抗挑戦性障がいの主な原因をそれぞれ解説します。

生物学的要因

反抗挑戦性障がいは家族歴とも関係があり、親や兄弟などに反抗挑戦性障がいの傾向のある人がいる場合、子どもにも同じ症状が現れる可能性があります。

しかし、生物学的要因は環境要因などと相互に関係しているため、一概に遺伝による発症とは言い切れません。

また、感情や行動の調整に関わる神経伝達物質のバランスが乱れることで発症する場合もあります。

環境要因

家庭内の一貫性のないルールや厳しい教育、両親の不仲などの環境要因が、反抗挑戦性障がいの発症や症状の重症度に大きく影響します。

また、学校などの集団生活のストレスや友達関係のトラブルも、症状を悪化させる原因となる可能性があるでしょう。

発達要因

子どもの発達段階や個人差も、反抗的な行動の表れ方に影響を与えます。

先ほど解説したように、ADHDを併存する場合、感情コントロールの未熟さや発達の遅れが見られることがあります。

子どもの発達の特徴を理解し、個々に合わせた支援を行うことが大切です。

参考：厚生労働省『発達障害の理解』

反抗挑戦性障がいの対処法

反抗挑戦性障がいは、適切な対応により症状の改善が期待できます。

ここでは、反抗挑戦性障がいの対処法を紹介します。

一貫したルールを設定をする

行動に対して一貫したルールを設定し、子どもが理解しやすい形で伝えていきましょう。

また、ルールを表にまとめるなど、視覚でわかりやすく提示する方法もおすすめです。

良い行動は褒め、望ましくない行動には一貫した結果を設定すると、子どもがどのような行動をすればよいのか予測しやすくなります。

ポジティブな関わりを増やす

子どもとポジティブな関係性を築くことは、行動改善の基礎となります。

毎日子どもと接する一定の時間を設け、関わりの中での小さな成功体験を褒めるなど、積極的に行動を認めていくことが大切です。

子どもの興味や関心に寄り添い、非言語的なコミュニケーションも含めた温かい関わりを心がけましょう。

コミュニケーションを工夫する

短く明確な指示を出し、子どもが理解しやすい言葉を選ぶなど、コミュニケーションの方法を工夫することも大切です。

親が感情的にならず、落ち着いた態度で接することを心がけると、子どもも落ち着いて対応できるようになっていきます。

専門的支援を活用する

家庭だけでは対応が難しい場合は、必要に応じて児童精神科医による診断と治療、心理カウンセリングなどの専門的支援を活用すると良いでしょう。

また、保護者が子どもと効果的なコミュニケーションを取れるように、ペアレントトレーニングを実践することも効果的です。

専門家のサポートにより、家庭内での支援の質を向上させることができます。

参考：厚生労働省『ペアレント・トレーニング実践ガイドブック』

学校と連携し支援体制を構築する

担任の先生などと定期的に情報交換を行い、学校での支援体制を整えていくことも重要です。

子どもが集団の中に入った時にパニックにならないように、学校でのルールやクラスでの決まりごとなどを明確にしてもらいます。

そして、正しい行動ができたら褒めるなど、一貫した対応をお願いしておくと良いでしょう。

家庭と学校が同じ方針で支援を行うことで、子どもの安定した成長を支えることができます。

よくある質問

反抗挑戦性障がいはいつまで続くのか、反抗期とは何が違うのかなど、反抗挑戦性障がいに関する疑問を持っている方もいるでしょう。

ここでは、反抗挑戦性障がいに関するよくある質問を紹介します。

反抗挑戦性障がいと反抗期の違いは？

反抗期は発達の過程で一時的に現れる正常な段階である一方、反抗挑戦性障がいは持続的で深刻な症状を持ち合わせています。

反抗期はおおむね2～3年で落ち着きますが、反抗挑戦性障がいは適切な支援なしでは改善が難しく、長期的に影響を及ぼす可能性があるでしょう。

どちらの状態なのかを見極めるには、反抗的な状態がどれくらい続いているか、どのくらいの頻度で発症するのかを把握することが重要です。

反抗挑戦性障がいの将来はどうなる？

早期発見と適切な支援により、多くの子どもたちは症状の改善が期待できます。

しかし、支援が遅れたり支援内容が不適切であったりと、子どもの症状に合わない対応をしている場合は、青年期以降も問題が持続する可能性があります。

継続的な正しい支援と、本人の努力を認め励ますことが症状改善に効果的です。

【まとめ】母親の言うことを聞かないADHDの子どもは反抗挑戦性障がいの可能性がある

ADHDの子どもが示す反抗的な行動の背景には、反抗挑戦性障がいが関連している可能性があります。

反抗挑戦性障がいの症状を改善するには、子どもの特性に応じた適切な環境調整と支援が重要です。

また、学校生活に支障がある場合は、家庭と学校が連携し必要な支援体制を構築することが求められます。

反抗挑戦性障がいの早期発見・早期支援により、多くの子どもたちの症状改善が期待できるでしょう。